新しいスタート

一時帰国していた日本からスペインに戻ったのが1月末の火曜日で、その週の土曜には引っ越しを控えていた。まるで平置きの箪笥かなにかのようにスーツケースを寝室の床に広げたまま数日を遣り過ごす。

そして予定通り土曜日の朝、私達は(つまり夫と犬達)車に積めるだけの荷物を詰め込み6年間暮らしたコルドバを出発する。私がこのアンダルシアの内陸の街で暮らしたのはたった6年に過ぎないけれど、夫はこの街で生まれ育ち、家族はもちろん親しい友人が皆徒歩圏内に暮らしている”超地元”なので私とは比較にならない程の「旅立ち感」だったはずだ。

私はかつて大変な引越し魔で、少し前に数えてみると、一人暮らしをしてから日本を出るまでに約20回(!)近く引っ越しをしている。賃貸マンションの更新なんてしたこともないし、新しい土地や自分にとって縁や馴染みのない場所でもなんの躊躇もなく都や県をまたいで引っ越しをしてその場所に馴染むともなく飄々と生活していた。私の数少ない長所のひとつは「身軽」であることだと思う(あるいは”だったと思う”)

今まで一番長く暮らした場所はどこかと聞かれると、それはもちろん実家ではあるのだけれど親元を離れて一人暮らしを始めたのがとても早かったので、大学に上がるまで実家暮らしをしていた人に比べると随分短い間しか暮らしていない。そしてその次に長く暮らしたのが今回の引っ越しまで暮らしていた、コルドバの夫所有のアパートメントでここには丸6年暮らした。

はっきりいってもしこのアパートメントが賃貸なら夫に「なるべく早く引っ越しましょう」と提案していたところだけれど当時は数年続いていたインドと日本(ほとんどインドたまに日本)を往復する生活が終わったばかりの、移動や非定住生活にいささかくたびれていた時期だったので、家賃も払わずのんびり暮らせる家があることが有難かった。70平米弱の狭くはないが決して広くもない普通の(でもちょっとくたびれた)アパートを、私が暮らしやすいように少し改装したら、気がつけばなんだかんだで6年も暮らしていた。

コルドバは「ザ・アンダルシア」という感じの歴史があって古い建造物の残る美しい小さい街だけれど、はっきりいって外国人が暮らしやすい街では決してない。まず英語を話せるスペイン人が信じられないくらい少ないのでスペイン語はマスト。スペイン語が話せなければ本当につまらない。色んな国を旅してこんなに英語が通じない国(というか都市)は初めてだった。スペインに到着した翌週、慌てて語学学校の入学手続きをしたくらい英語が通じなかった。私が暮らしはじめた頃に比べて英語が話せる若者が増えたけれど、それでもはっきりいって日本の中学生レベルなうえ、40にもなって片言の英語を話す20代前半(あるいは10代後半)のスペイン人と私の間に共通の話題など何もない。

そんな古き良き典型的なスペインの古都コルドバから私達が新天地として選んだのはマラガ県のネルハという小さい村。マラガというところは地中海沿いに(もちろん内陸側にも街はある)ぎっしりと街が連り、1年を通して温暖な気候なので太陽を求める英国、北欧、ドイツ、オランダ人の移住者が多く国際的な街(や村)が多い。

とにかく私達はここで新しいスタートをすることになった。

 

 

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